Aoyama Rugby Football Club

諌見先生x三宅先生x宍戸先生 顧問鼎談 70周年記念企画2

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人生が変わる高校ラグビーの聖地「花園」は、

決して手が届かない目標ではない!

 

「受験勉強」と「ベスト4」の隘路を駆け抜けるために何をすべきか?

進学指導重点校という重圧のなかで50名を超える部員たちを率いてラグビーを教える顧問たちは今、その狭い道を全力で駆け抜けることに全精力を割いて現役の生徒たちの指導にあたっている。

この鼎談では、そんな先生方の胸の内を語ってもらった。

 

出席者

諫見 雅隆 先生

三宅 丈治 先生

宍戸 亮太 先生

 

司会・構成

永田洋光(スポーツライター)

 

 

■生徒とOBたちで築いた土台を引き継いだ指導者たち

―― 諫見先生は、就任して何年になりますか。

 

諫見 今年で9年目になります。都立高校ラグビー部の多くは、どの高校も伝統的に生徒たちがOBの指導を仰ぎながらラグビーに取り組むスタイルでした。青山高校も50年近い間、生徒たちがOBの指導を仰ぎながら自分たちで練習を積み重ねてきました。その歴史が、今のラグビー部の土台を築いています。

ただ、時代的にそういうスタイルが立ち行かなくなったときに、専門知識を持った指導者が代々指導を引き継ぐことができて、今に至るいい循環が生まれたのだと思います。

最初に指導された前田剛先生は11年間、顧問をなさっていましたし、後任の太田勲先生も9年間在職されていました。私は、太田先生と1年間ご一緒させていただきました。それから今年で9年目になります。私が指導している期間に限って言えば、主な戦績は、我々の年間最大目標に置いている全国大会地区予選で、ベスト8というのが3回ありました。

 

―― 先日は現役のキャプテンとバイスキャプテンに話を伺いましたが、非常に真面目ですし、優秀な印象を受けました。

 

三宅 確かに生徒たちの頑張りには頭が下がります。

ラグビーの能力が高いとは必ずしも言い切れませんが、やるべきことに対して本当に集中して取り組んでいます。その頑張りで全国大会地区予選ベスト8ぐらいまでは行けると思います。ラグビーに限って言えば、その先のベスト4になかなか進めないのが課題ですが、本当にひたむきにやっています。

もともと勉強の成績も優秀な生徒たちですから理解力も高いのですが、それだけではなく体を張ってラグビーをやろうという気持ちも強い。それがラグビー部を支えています。

特に、生徒たちの集中力は非常に高い。受験勉強でも、3年生の秋の模擬試験でも「E判定」ばかりだったラグビー部の生徒たちが、最後にグッと学力が伸びて志望校に入るケースが多いですから。そうした集中力がラグビーにも出ています。また、ラグビーというスポーツ自体も、集中力を発揮することがいい結果につながるところがあります。ですから、生徒たちに合っているのでしょうし、ラグビー部が青山高校の看板になっているのでしょうね。

 

―― 新しく顧問になった宍戸先生は、青山高校の生徒たちをどうご覧になっていますか。

 

宍戸 私自身、都立高校の出身ですが、生徒たちが昼休みに楽しそうにタッチフットをやっている光景を見ると、非常に懐かしい気持ちになります。私の高校時代も、昼休みにみんなでグラウンドに出てラグビーボールを使って遊んでいましたから。彼らの楽しそうな様子を見ていると、都立高校にラグビー部があって、なおかつ部員たちがそのスポーツを楽しんでいるという、いわば原風景に接しているような気持ちになります。

青山高校の生徒たちで印象的なのは、前任の都立高校で教えると理解するまでに3日かかるようなことが30分でできるようになることです。これは生徒たちの理解力が高いからでしょう。もちろん、実際に試合で活用できるようになるにはもっと時間がかかりますが、理解して取り組むまでの時間が、Bチームの選手たちまで含めて非常に短い。そこに、彼らの賢さを感じますね。

 

―― 都立高校のラグビー部であるにもかかわらず、青山高校は人数が多く、Bチームに回って公式戦に出場できない部員が出てきます。その辺りは先生方でどうフォローしているのですか。

 

諫見 部員の人数が増えたのは、私が赴任して3年目でした。

その前年には、1年生部員が6人とラグビー部が非常に危機的な状況になりました。その年は、私も中学校やラグビースクールを回って青山高校を受験してもらえるようにお願いしましたし、当時の部員たちとどういう勧誘をすれば部員が増えるか真剣に話し合いました。その甲斐あって翌年は新入部員が20名だったのですが、そうなると、彼らが3年生になったときに公式戦で試合に出られない選手が出ることになります。そういった選手にも最後までモチベーションを高く保ってもらって、なおかつ満足して卒業してもらうためにはどうすればいいか。その点を三宅先生といっしょにずいぶん考えました。

生徒たちが100%納得したかどうかはわかりませんが、練習試合のなかでチャンスを与えたり、さまざまな工夫もしました。結果を出さなければいけない試合はどうしてもAチームのメンバーで戦うことになりますが、そのなかでいくつかのポジションで実力が接近しているBチームの選手を起用することもありました。もちろん毎年何人かは試合に出られないまま卒業していく生徒たちが出ますが、その子たちにも「ラグビー部で3年間を過ごして良かった」と思ってもらえるように工夫はしているつもりです。

 

三宅 私は今年で8年目ですが、確かに赴任した当初は、青山高校もいよいよ15人を維持できずに合同チームで大会に出るかもしれないという危機的な状況でした。その翌年に、諫見先生が言われたように部員が入ってきたのですが、私の方では2つのことを考えていました。

1つは、私がAチームに入らないような子を中心に練習を見ることでした。そのなかで、格別目立ったことはしなくても、いいタックルを続けているような生徒を見つけると、諫見先生に「彼がいいタックルをしているから、今度試合で使ってはどうか」と報告する。諫見先生も、そういう生徒をすぐに起用してくれます。そうすることで、生徒たちに「僕たちがちゃんと見ているよ」というメッセージを伝えていました。

もう1つが、メンバーを外れた子から、いろいろと話を聞いてあげることでした。

諫見先生がそこまでフォローすると、監督という点でキャラクターが柔らかくなってしまうので、私がその生徒を呼んで、なぜ選ばれないのか、どういうプレーをしたいのかといったことを聞いて、モチベーションを下げないようにしてきたつもりです。

 

諫見 生徒のケアという側面だけではなく、もともと私は、ラグビーという競技では1つのポジションにつき1人のコーチが必要なのではないかと考えていました。今年、宍戸先生が来て3人で指導できる体制になりましたが、監督という立場にいる私にも見えないことがたくさんあります。実際、三宅先生から「使ってはどうか」と言われた生徒を試合に起用したら、大化けしてヒットしたケースもありました。今年は宍戸先生の見解も加わるので、さらに細かく生徒たちを見られるようになります。少々おこがましい言い方ですが、ラグビーをやってきた専門家が3人で見ていることは、彼らにとって非常に幸せなことだと思います。試合に出られない選手をケアすると同時に、チーム力を上げるためにも、複数の指導者が見ることは非常に有効でしょう。

 

三宅 実際にこんなケースがありました。

1年生で入部してきたときは、体も小さいし足も遅くて、とても試合に出られるような選手ではないと思っていた生徒が、ある日、上級生を相手に会心の低く突き刺さるようなタックルを決めた。それまでは彼を試合に出すなんて考えられなかったのですが、早速、諫見先生に「あいつ、いいよ」と報告したところ、試合で大化けしました。

 

諫見 本当にヒットしましたね。

 

三宅 こういう例があれば、生徒にも「頑張っているところを見ているよ」というメッセージを伝えられると思います。

 

―― 宍戸先生は赴任されて2ヶ月以上経ちましたが、いい選手はいますか。

 

宍戸 たくさんいます。その反面、諫見先生から期待されてメンバーに起用されているのに、期待に応えていないような生徒もいます。私は、今はそういう生徒に「おまえは期待に応えていない」と言い渡す役目だと思っています(笑)。

 

諫見 それだけではなくて、きちんと生徒に声をかけてもらって、伸ばしてもらっています。そういうことは、決して私1人だけでは為し得ないことです。三宅先生や宍戸先生に言われて初めて注視する生徒もいますから。それが、ラグビー部の底上げにつながっています。

■「壁」を破るために必要なもの

―― 今回、青山高校の現役部員から話を聞いて感じたのは、みなさん非常に「スマート」であるということでした。彼らが一所懸命にラグビーと勉強を両立させながら、目標であるベスト4、つまり江戸川陸上競技場で準決勝を戦うことを目指す気持ちも、ひしひしと伝わってきました。一方で、ラグビー強豪校の部員たちが、もっとギラギラした気持ちで「花園出場」を目指していることも、取材などで知っています。そうした強豪校の一角を崩さなければ目標は達成できないわけですが、そのために何が必要なのか、みなさんのご意見を聞かせてください。

 

諫見 これまでは、生徒たちと相談して目標を決め、そのなかで一定の成果を出して、生徒たちも満足感を持って卒業してきたと思います。ただ、現実的に考えれば、目標、つまりベスト4には届いていません。今年を例に取れば、春季大会で大敗した早稲田実業高校に勝たなければ目標を達成できないわけです。私たちとしては、その目標から逆算して、やるべきことを整理して日々の練習に取り組んでいるのですが、正直に言えば、ときどき今言われた「ギラギラした」部分が若干足りないのではないかと感じるときもあります。ただ、その面を強調し過ぎると、かえってマイナスになる可能性もありますし、その辺りにはジレンマを感じますね。

 

宍戸 青山高校は、生徒たちが学力面で非常に高い水準を求められていますから、その部分とのバランスを考える必要があります。都立高校で現在もっとも部員数が多いのも、諫見先生と三宅先生がバランスを上手く取りながら伝統を築いて来られたからでしょう。私としては、その伝統を継承しつつ、壁を破らなければいけない。

そのためには自分たちの心の壁を破り、取り組み方を変える必要もあるかもしれません。目標を達成するためには、腹を据えるというか、覚悟を持つことが求められますが、その点がまだ薄いように思いますし、課題だと言えるでしょう。

 

三宅 私たち教員と生徒の関係ではベスト4という目標がありますが、私たちが立ち入れない部員同士の間で、共通の目標として「よしっ!」という気持ちで共有されているかどうか――その辺りが、ちょっと窺い知れない部分ではあります。

OBに、筑波大学に進学して体育会ラグビー部で試合にも出た、酒井求君という選手がいますが、彼の1学年下のOBと先日、ちょっと話をしました。

彼は、「あの頃は酒井さんがバックスを怒鳴りまくっていた。FBが抜け出したところに、きちんとサポートについていないとえらい怒られたし、雰囲気がピリピリしていました」と懐かしそうに話していましたが、そういう雰囲気が、今はもう少し柔らかいお利口さんな雰囲気になっているのでは……という危惧はあります。生徒のなかから、そうした壁を打ち破るような空気が出てこないと、ベスト8の壁を破るのはちょっと難しいかもしれませんね。

 

諫見 着任3年目に新入部員が一気に20名に増えたときは、能力的にも高い選手がいました。彼らが3年生になったときは、私たちもそれなりに手応えを感じていました。春季大会では青山学院高等部に敗れはしたものの、かなり競った試合ができました。その直後成城学園高校と試合をしたのですが、この試合に負けました。

私としては、そういうチームに勝ちたいと思っていましたから、かなり頭に来て、生徒たちに学校に帰って練習する!」と言いました。そうしたら、生徒たちとの話の中で「先生、それは意味がないと思います」と言い出す生徒がいました。あとで話を聞くと「このあとに塾に行く予定を入れている生徒もいるので」ということでした。

この辺りが非常に難しいところです。生徒たちが限られた時間にラグビーをやっているのは十分に理解していますので、そのときは三宅先生と相談して練習を止めましたが、逆にその限られた時間に狂ったようにラグビーに打ち込むための起爆剤が何かないか――という気持ちもあります。その起爆剤を、今も私は探し続けていますが、ベスト8の壁に阻まれているのは、それを見つけられていないということなのでしょうね。

 

―― 先日、校長先生×OB会幹事長×父母代表という鼎談をしたのですが、そのなかで父母代表として出席していただいた、元茗渓学園高校監督の徳増浩司さんがこういうお話をされていました。「全部員が一人残らず花園に行くんだ! という気持ちになれば、自然に部の空気が変わる。花園に行ける年は、そういう一つになるパワーを感じました」と。今の諫見先生のお話を聞いて、そのことを思い出しました。

 

諫見 まさに徳増さんのおっしゃる通りです。

私は宍戸先生と机を並べていますので、ラグビーの技術論もいろいろと話し合いますし、実際に宍戸先生はよく勉強されています。でも、いくら最新の技術や練習方法を取り入れても、それらはどこの強豪校でもやっていることです。では何が違うかと言えば、やはり「花園に行きたい!」という気持ちの部分であったり、ラグビーに徹底的にこだわる部分であったりだと思います。しかも、それが指導者の一方通行ではなく、指導者と選手の間でキャッチボールのようにやりとりされているところが違うのでしょうね。

 

三宅 今の茗渓学園の話がすべてでしょうね。

私たちは教員として、青山高校の学校教育のなかで勉強や学校行事とのバランスを考えながらラグビー部を指導していますが、部員たちがその枠を越えて「もっとやりたい!」という気持ちになるかどうか。「先生、これでは生ぬるいですよ」と生徒たちが私たちに言って来るかどうか。それは、私たちから働きかける性質のものではありません。あくまでも、生徒たちからそういう気持ちになるかどうか、でしょうね。そうなったときに、私たちがそこでまたバランスを取りながら、生徒たちの声にどう応えるかを考えればいいわけですから。

 

■家庭との絆を固めて退部者を出さない!

宍戸 文武両道ということを考えたときに、同時並行的に勉強とラグビーを両立させるのも文武両道ですが、ある時期はラグビー、ある時期は勉強という、時間をずらした文武両道もあるのではないかと考えています。もちろん、全体のスパンは限られているわけですが。

先日、諫見先生に夏合宿の期間に生徒たちが勉強をするのかどうか尋ねたのですが、「その期間は勉強はやっていない」と聞いて、少し安心しました。もちろん、それは学年によっても事情は違うでしょうね。3年生には、春季大会を終えて秋の最後の公式戦に向かう大切な夏休みであると同時に、受験を控えた大切な夏休みでもあるわけですから。当然、勉強へのプレッシャーも強いでしょうね。

 

諫見 非常に強いですね。今年の3年生は入学時から非常によく勉強をしています。私が異動してきたこの9年間でも、学校の雰囲気はかなり変わりました。学校運営の成果が出ている証です。その一方で、「勉強じゃなくて、今はラグビーだろ!」みたいな生徒が少なくなっていることも確かです。非常に真面目な生徒たちですから、彼らが感じるプレッシャーは、かなり強いでしょう。また、もともと勉強ができる子たちですから、周りの勉強への意欲に焦りも感じるでしょう。

それから、ご家庭の理解を得ることがラグビー部の活動にとっては非常に重要です。

この点に関しては、私たちが築いてきた信頼関係は間違いなく大きいと思っています。今ここで選手に対して「勉強なんかいいからラグビーに集中しなさい」と言わなくてすむものを、近年積み上げてきました。そこまで手当てしないと、入学時に3年生の秋までラグビーを続けることにご理解をいただけないですからね。この点は、私たちも必ず明確にしています。その分、二の足を踏む生徒や保護者の方がいらっしゃるのは事実ですが。ただ、入部した生徒に関して言えば、途中で辞める生徒はほとんどいません。

 

―― それがすごいですよね。私が高校でラグビーを始めた当初は、6月ぐらいまで練習が辛くて、いつ辞めようかと毎日考えていましたから(笑)。その点で、1年生を別メニューにしているのは画期的だと思いました。

 

諫見 三宅先生のおかげで1年生は今、楽しくやっています(笑)。

 

三宅 ラグビーはコンタクトがあるスポーツですから、体のでき方が違う1年生と3年生を最初からいっしょにやらせるようなことはしません。それに、ラグビー部に入った以上、勝つことも大事ですが、安全に、大きなケガをしないように3年間を過ごすことが何よりも大切です。そのために、1年生にはケガをせずに基本的なプレーができるよう指導しています。やがて1年生同士で、少しずつ体のぶつけ合いをするうちに、ラグビーをやる雰囲気ができてくる。それが、部員があまり辞めない理由の1つになっていると思います。

そういうプロセスを経て、1年生が「よし、僕も試合に出るぞ!」という気持ちになってくれればいいですね。だから、本格的に3年生といっしょに練習を始めるのは、1学期の期末考査が終わって、合宿に向けた練習メニューに入ってからです。

 

■近県の公立高校と試合を組む夏合宿

―― 今年の夏合宿は何試合ぐらい練習試合をするのですか。

諫見 Aチームは全部で5試合です。もちろん、Bチームも同じように試合ができるよう予定を組んでいます。1年生も、同じように新入部員が多く入っているであろう高校と試合を組んでいます。ほとんどが、群馬県の太田高校、埼玉県の春日部高校、神奈川県の湘南高校といった公立の進学校です。毎年のように合宿で試合をしていますので、今では定期戦のようになっています。

 

三宅 今年は新入部員が多いので、Aチーム、Bチーム、1年生と3チームを組めます。これは都立高校として画期的なことです。生徒には、「菅平に行ったら試合だから、それまでは練習で体力をつけろ!」と言っています。

 

諫見 まあ、基本的には1年生チームと上級生チームみたいな分け方です。Bチームに1年生を大勢起用するような事態も考えられますし、Aチームを別にすれば、もう1つのチームは、試合経験の少ない生徒たちに、試合を経験させることが主な目的になります。

 

―― 女子マネジャーの座談会で「合宿が楽しい」と聞いて非常に驚いたのですが、やはり生徒たちは合宿を楽しみにしているのですか。

 

諫見 いや、そんなことはないと思います。今のラグビーは、コンタクトが激しいので毎年何人かケガ人も出ますし、体も辛くなってきます。

 

三宅 ただ、合宿よりも、その前の練習の方をキツイと思っているのは確かでしょう。もちろん、合宿ではケガ人がどうしても出ますし、体のきつさも出てきますが、ラグビーはやはり練習よりも試合をしている方が楽しいですからね。

 

諫見 合宿の試合では、勝敗よりも、秋の公式戦のために準備すべきことをどのぐらい試せるかを確認することが大きな目的になります。

 

―― とは言いながら、連敗するとムードが暗くなるのではないですか。

 

三宅 確かに暗くなりますね。

合宿のミーティングでは、まず諫見先生がその日の試合を、厳しいことも含めて総括します。ですから、私は逆に「でも、こんなことができていた」というように話します。2人で厳しいことを言うと暗くなるばかりですから(笑)。昨年の合宿は良かったですけど、合宿は負けて暗くなる場合の方が多いですね。

 

諫見 いい成果を生む年は、そういう崩れかけた雰囲気をガッと盛り上げるようなたくましい選手が必ずいます。そういうチームは、やはりいいですね。逆に敗戦に歯止めがかからなくて、初日から帰る日まで負け続けたこともありました。

 

宍戸 6月に3試合ほど練習試合をやりましたが、やはり今やろうとしていることがなかなか上手くいかない。今は少し足踏み状態です。ですから、諫見先生と話して、成果が出るまでに6週間から7週間ぐらいかかることを練習で始めました。時期的に、期末考査を除くと、菅平の合宿に行く頃にちょうど成果が出るようなタイミングです。ですから、今年の合宿は、今まで練習してきたことが、ゲームでどのぐらいできるのかを見るいい機会になります。チームの力を測るバロメーターになるでしょう。

現実的に考えれば、試合は相手の力が上回っていれば、青山高校が100%力を出し切っても負けますが、逆にこちらがやろうとしていることが少ししか出せていないのに、点数で相手を上回る場合も考えられます。そこで生徒たちが勝った負けたで一喜一憂していたのでは、「それは違うよ」ということになるでしょう。もともと頭のいい子たちですから、その辺りは理解してくれると思います。ただ、こちらが言い過ぎると、本当はもっと喜んでいいような試合でも素直に喜ばないようになってしまう。それはそれでまた違うので、そうした案配が難しいですね。

 

■OBが築いた伝統を次代に引き継ぐのが使命

―― OB会に対して、先生方から何か要望などはありますか。

 

諫見 感謝してやみません。

都立高校は、顧問が異動しますから、卒業生が多くてもなかなかOB会を組織するのが難しい面があります。ですから、私も青山高校に異動するまで、OB会に対してさほど期待していませんでした。ところが、異動してきたら、物心両面から支援していただけて、本当に驚きました。OB会の前幹事長の鈴木淳生さんとお話ししたときに、「ゆくゆくは青山高校ラグビー部OB会の一員となるべき生徒を、3年間、宍戸、三宅、諫見に預かってもらっているという感覚でいる」と伺って、非常に感銘を受けました。

ですから、生徒たちにも「こんなに素晴らしい都立高校ラグビー部OB会はないんだよ」と、ことあるごとに伝えています。金銭的な面だけではなく、私がOB会にお願いして、していただけなかったことも1つもありません。本当に感謝していますし、こういうクラブが、今後も長きにわたって続いて欲しいというのが、私の切なる願いです。

今年は、宍戸先生が来て指導者にも恵まれましたから、今後もOB会と上手くやりとりをしながら、いい支援体制を構築できればいいと思います。

 

三宅 私は2つあります。

1つは、単独チームを維持して、次の代に引き継いできた伝統に対して、まず敬意を払いたい。

同時に、私たちは、そうした部員の人数を引き継ぐことが勝つことよりも大事だと思いますし、また、伝統を持つ部を継続させることがOB会に対しての私たちの責任だと思います。教員に異動はつきものですが、15人制の大会に単独チームで参加できるだけの人数を揃えて次の顧問に引き継ぎ、その顧問もまた人数を維持する努力を続けて同じ状態で後任者に引き継ぐことが、一番の責任です。

もう1つは、過去に華々しい戦績を残した代もあったにもかかわらず、OB会から「オレたちのときはこうだったから、頑張れ!」というような、変なプレッシャーがかかったことは一度もありません。私たちが聞いて初めて、いろいろと素晴らしい結果を残したことがわかる。それに比べると、今の私たちがそれに匹敵する成績を残せているか、内心は忸怩たるものがあります。ラグビーを指導する以上、やはり過去最高の戦績を超えたい思いがあります。OB会からそうしたプレッシャーがまったくない分、逆に私たちが「やらなければ!」という気持ちになりますね。

 

宍戸 今のようなお話を、着任したときからずっと聞いています。ですから、そうした伝統にあぐらをかくのではなく、自分がやるべきことを本当にやるしかないという使命感しか私にはありません。ラグビーをやる以上、勝ち負けはどうしてもつきまといますが、勝つにしろ負けるにしろ、試合を見た人が「今日の青高のゲームは良かった!」と思えるような試合をすることが、すべてだと思います。そのためにも、生徒との日々の関わりのなかで、誰からも応援されるようなチームを作ること。それが使命でしょうね。

 

■「花園」は人生を変える!

―― 全国大会である「花園」を目指すことが、高校でラグビーに取り組む選手たちの大目標になります。現実的に考えると非常に遠い存在かもしれませんが、先生方が、それぞれ花園についてどのように考えているのか、最後にお話し下さい。

 

宍戸 私は都立秋川高校出身ですが、高校時代は本気で花園に行くことを考えていました。

実際には、東京都の花園常連校である國學院久我山高校と3年間に4回対戦して、最初の3回はすべて100点ゲームで負けました。それでも、3年生の新人戦で負けたあとに、久我山に勝つにはどうすればいいかをみんなで考えて、練習をタックルと走ることに絞り込んで春季大会まで徹底的にやりました。そして春季大会で勝ち上がって久我山と対戦したのですが、そのときは前半を10点差以内で終えることができました。後半に入ってミスから崩れて最終的に点差は開きましたが、自分自身の実体験として、花園に出場するチームを相手に、覚悟を決めて練習を絞っただけでそれだけ差が詰まったという手応えが残りました。秋の予選では、久我山とは対戦しませんでしたが、準々決勝で本郷高校と対戦して10―16で敗れました。

本郷は、そのまま勝ち上がって花園に出場しましたが、そのときに本郷の大浦一雄先生が新聞で「秋川の泣きながらくらいついてくるゲームが忘れられない。花園では秋川の分も背負って頑張りたい」とコメントしたことを知りました。そのとき、試合には負けたけれども、魂だけは花園に行った気持ちになりました。

私が都立高校の教員になったのも、そうした体験があったからで、やったらできるという経験を彼らにも味わって欲しいと考えています。

ただ、あまりそうした話ばかりすると精神論に傾き過ぎるので、現状もしっかりと見つめながら指導していきたいと思います。

実際には、私自身も花園に行きたいのですし、心の奥底には、そうした思いがありますが。

 

三宅  私の息子が諫見先生の後輩で、久我山で花園に出場したのですが、ラグビーの力は青山高校にいる生徒ぐらいでした。努力していたのは知っていましたが、そんな息子が花園の舞台に立つと、自信を持ってプレーしているのが伝わってきた。「こいつ、こんなプレーができたのか?」とか「こんなタックルができたのか?」と思うようなプレーもあって、改めて、普通の子がこれほど自信を持って晴れがましくプレーできる花園が、すごい場所なのだと気づきました。

高校生にも、ラグビーをやる以上、やっぱり最終的な目標は花園だと思ってもらいたいし、「オレたちも是非、花園に!」という思いになって欲しい。そうすることで、これから生きていく上で違う景色を見られるのではないか、と思います。花園というのはそういう場であるし、生徒たちがそこを目指すならば、私も全力でそれをサポートする。まさに、そこに尽きます。

 

諫見 私が久我山に在籍していたときは、ちょうど黄金期で、2年生のときは花園で優勝しました。3年生のときは、オゴリもあったのか、Aシードに推薦されながら準々決勝で敗退しました。それでも、自分が3年生のときの印象が強く、今でも花園に行って人生が変わったと思っていますし、出場した経験が、その後の人生のさまざまな場面で自信につながっていると信じています。

もちろん生徒たちにはそんなことは話しませんが、でも、事実として人生は変わりました。

ですから、青高の生徒たちにも、今やっていることの先に人生が変わるような素晴らしい体験をできる場所があるということを、見通してもらいたい。

毎年冬に生徒たちを花園に連れて行きますが、願わくばそのなかから1人でも2人でも、この雰囲気をグラウンドに立って直に感じ取りたいと思ってくれる生徒が出てくれば、結果も、もっといい方向に変わるでしょう。また、そういう選手が出てきて欲しいというのが、彼らに対する欲求でもあります。必ず何かが変わりますし、花園に出る過程で、努力することからそれが始まることを感じ取らせてあげたい。その点で、今の生徒たちが、自分たちが目指すべき目標である花園に立っている選手たちを、雲の上の人を見るような目で見ているのが、ちょっと残念です。

努力する過程で、「決して手が届かない目標ではない」と思わないと、目標に届くまでの努力は難しいと思いますので。

 

三宅 私も前任校の国立高校で生徒をやはり花園に連れて行きましたが、ある年、「先生、オレ、この場でやれるよ!」と言った生徒がいました。彼は、その後、慶應義塾大学に進んでラグビー部に入り、レギュラーになりました。今でも、「オレは花園に行って良かった」と言っています。実際に自分の目で見て、「あれならオレにもできる!」と思ったのが、彼の原動力になりましたし、もちろんそのために努力もしましたから。ですから、青山高校でも、そういうふうに受け取ってくれる生徒が出てくれば、本当にいいと思います。

 

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