Aoyama Rugby Football Club

校長先生×OB会長×父母代表 鼎談 70周年記念企画1

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校長先生×OB会長×父母代表鼎談

「現役生には、二兎も三兎も追って、120%頑張ってもらいたい!」

 

創部70周年を迎えた都立青山高校ラグビー部。

この伝統を活かしてこれからの未来を切り拓くためには何が必要なのか。

伝統あるクラブに関わる三者が、それぞれの立場から熱く語り合った!

 

出席者

小山利一 東京都立青山高校校長

中曽根寛 青山高校ラグビー部OB会会長

徳増浩司 父母代表 元茗渓学園高校ラグビー部監督 ラグビーワールドカップ2019組織委員会事務局長

 

司会・構成 永田洋光 スポーツライター

 

 

■現役部員が50名を超えることの凄さ

―― スポーツライターの永田洋光です。私は新宿高校ラグビー部のOBで、青山高校には公式戦で大敗した経験があります(笑)。今回はご縁があって、70周年記念誌の編集に携わることになりました。

そこで本日は、小山利一校長先生、青山高校ラグビー部OB会の中曽根寛会長、父母の代表として、元茗渓学園高校ラグビー部監督で、現在ラグビーワールドカップ2019組織委員会にいらっしゃる徳増浩司さんにお集まりいただき、学校側、ラグビー部、父母というそれぞれの視点から、青山高校ラグビー部の将来の可能性について語り合ってもらいたいと考えています。

 

徳増 先日も久しぶりに青山高校のグラウンドに来て驚いたのですが、都立高校にしては部員の数が多いですよね。まだ春休み中で新入生が入っていないのに、あれだけ充実したメンバーがいることに驚きました。

 

中曽根 私も、4年前にOB会の幹事関係で学校に来たのですが、部員が40~50名いると聞いて驚きました。私たちの現役の頃には考えられなかった数ですね。校長先生を始め、諫見先生、三宅先生、歴代の顧問の先生に力を入れていただいた結果、これだけ充実したのだと改めて感謝しています。

 

徳増 私の次男が太田先生のときにお世話になりましたが、そのときも人数が多くて、確か一度『ラグビーマガジン』で取り上げられました。当時も、みんなでものすごい勧誘作戦を展開したと聞いています。私は1年生の指導を担当させてもらったのですが、中学校時代に部活で何をやっていたか尋ねると「美術部にいました」というような子もいた(笑)。ラグビーどころか、スポーツとも縁のないような生徒がたくさん入っていましたね。

 

中曽根 今では、小さい頃からラグビースクール等に通っていたような生徒も何人かいるようですが、当時は今ほどラグビーというスポーツが注目されていなかったけれども、そのなかでも公立高校として頑張りたい、という気持ちは持っていました。もっとも現役に今すぐ「目指せ、花園」というとややバーが高くなり過ぎますが(笑)、せめて強豪校の一角を崩して、ベスト4の常連校を浮き足立たせるぐらいの気持でラグビーに取り組んでもらえたらと思っています。

 

小山 都立高校で全国大会に行くのは、どんな競技でも非常に難しいと思います。野球では城東高校や雪谷高校が全国大会に出ましたが、文化スポーツ推薦の枠で中学校時代に優秀な成績を残した生徒を特別推薦で入学させられるところが、青山高校とは違います。一般入試で合格した生徒で部活動をした場合、まず目標となるのは関東大会出場でしょうね。

青山高校では、中学校の野球部やサッカー部で活躍した子たちがラグビー部に入るケースが多いですね。これは体育の諫見先生を始め、教員が熱心に勧誘しているからでしょう。1年生の体育の授業でタグラグビーをやって、ラグビーの面白さに目覚めさせようとしていますから(笑)。現在、都立高校では15人制ラグビーに単独で参加できる学校が少なくなり、合同チームを組む高校が増えていますが、そのなかで3学年で50名の部員がいるのはすごいことだと思います。

 

中曽根 本当にすごいなと感じます。

私自身は中学の時からラグビーと触れ合っていましたが、当時はラグビースクールなどがあまりなくて、やはり高校から始めた部員がほとんどでした。いわば、素人ばかりだった。ただ、スポーツをやらせてみると一部分であっても運動能力の高い選手が多かった。ですから現在の様に50名も部員がいれば、その中からさらにいい選手が生まれてくるでしょう。

 

■秩父宮ラグビー場の前に学校があることは果たして恵まれていることなのか?

徳増 次男がお世話になったときに、松本拓君というウイングがいたんですが、彼は高校ジャパンに選ばれてもいいぐらいのスピードとバネを持っていました。当時は、彼をどう使うかという戦略を立ててゲームを組み立てていました。彼は中学校でテニスをやっていたそうですが、そういう運動能力の高い選手が入ってくることもありますよね。

ただ、私は指導者としては私立の中高一貫校で教えていましたが、青山高校と違っていたのは夏合宿の期間。私立では1週間以上菅平で合宿をしてその間に何試合も練習試合をできますが、青山高校の場合は4泊5日なので、実質的にフルに試合を組めるのが真ん中の3日間しかない。しかも、次男たちのときは嵐で試合が中止になったのでほとんど試合をできなかった。この日数は公立高校で決まっているのですか?

 

小山 基本的にはそうですし、予算の関係もあります。単独合宿ではなく、なるべく合同合宿にして引率する教員の数を少なくするなど、公立高校の場合はどうしても金銭面での制約から逃れられないところがありますね。

 

中曽根 私も、昨年、一昨年と合宿に行って感じましたが、他校と合同で合宿をしていっしょに練習をしているから、各校の組織づくりとか練習方法など、いろいろと勉強できますよね。

 

小山 いくつかの学校と同じ時期に合宿を組めるよう、事前に連絡を取り合って調整しているようです。

 

中曽根 あとは、こういう都心の一等地に学校があるからでしょうが、グラウンドが狭い。各運動部がグラウンドに混在して練習しているのを見ると、何とか単独で練習させてあげたいな、と思います。秩父宮ラグビー場を使えればベストなんですが(笑)、いろいろな学校とコラボしてもいいから、グラウンドを広く使えれば理想的だな、という思いはあります。

 

徳増 これだけメンバーが集まって、卒業するまで辞めずにラグビーを続けているのは、先生方の熱心さやひたむきさがあるからでしょうし、練習方法もいいのだと思います。だからこそ、さまざまな制約があるなかで、力を出し切っているのでしょう。先ほども言いましたが、そうした積み重ねのなかで、結果を出すチャンスが訪れることもあると思います。

次男が現役のときの女子マネジャーの住永さんが、ラグビー協会に来たときに「私たちは必ずここに来ます!」と言っていました。女子マネが熱くなっていたんです(笑)。秩父宮に行くということは、東京都の決勝戦に出るということですよね?

 

小山 そうです。

 

徳増 そこに一番近い学校ということですけど、手が届かないというわけでは決してない。

 

中曽根 秩父宮ラグビー場の前に学校があるというのは、本来恵まれているのか恵まれていないのか、よくわからないときがありますが(笑)、生徒としては常に意識するし、何かの縁だとも思う。それを後ろ盾にして「オレたちも頑張れるんだ!」と思ってもらいたいですね。

 

小山 雪が降ると、ラグビー場の雪かきに駆り出されますしね。

 

徳増 ラグビー協会としては、雪かきやボールボーイでお世話になっています(笑)。

 

小山 そういうご縁で、トッププレーヤーのレベルの高いプレーを間近で見たり接することができるのは他校と違うところです。あとは、そうした機会を利用して、いかに自分のプレーに吸収できるか。そして、活かせるか、でしょうね。

 

■ラグビー部員は学校内の模範生たれ!

―― 小山校長は、ラグビー部員たちにどういう存在であって欲しいと期待していますか?

 

小山 私は常に「学校内の模範生たれ」と部員たちに言っています。

ラグビーは、試合中は全力でぶつかり合いながら、終わればノーサイドの精神で敵味方なく交流する紳士のスポーツだと思っていますから、そういう姿勢を学校のなかに活かして欲しい。リーダーとして他の生徒たちを引っ張るような存在であって欲しい――つまり、成績がいい悪いではなくて、人間として優等生であって欲しい――そう個別に話しています。

勉強も含めて、部員たちはみんな頑張っていますし、優秀な先輩たちを見ているから、非常にいい形で卒業生をお手本にしながら学校生活を送れていると思っています。

 

中曽根 先輩というと、我々の代まで含まれるのか、それとも、もっと若い先輩たちでしょうか(笑)? というのも、私たちのときは、ラグビーをやっているからデキが悪くてもいい、みたいなところがあったものですから(笑)。

 

小山 菅平の合宿に行くと、いろいろなOBの方にお会いします。70歳を過ぎた方が1年生といっしょにラグビーをやっているところを見ると、本当に後輩たちのことを思ってくれていると感謝したくなります。ラグビー部には、代々一橋大学に行くOBがいますが、去年は一橋大にいるOBが4年生だったので、何とか合格して「あとを絶やすな」と頑張って、一橋大に入ってラグビー部に入部した生徒がいました。それもまた、卒業生との良いつながりでしょう。

 

中曽根 そういうつながりはいいですね。

また、OB会としても、70代や80代の方が夏合宿に来ていただくことで、OB会の基盤がしっかりできていることをアピールできると思います。現役にプレッシャーをかけるわけではまったくありませんが、そういう基盤があるので、いい意味で思いっ切りラグビーに打ち込んでもらいたい。

 

―― 都立高校からラグビー部が次々と消えていくなかで、青山高校は部員数が50名を超えています。OB会からの支援も篤く、現役との交流が密にあるので、現役にとっても部員を確保しなければいけないという使命感があるように感じます。

 

中曽根 夏合宿もそうですが、公式戦のときもOBが20名ぐらい試合会場に応援に来ます。そういう面では、つながりもできるし、何かの相談にも乗れるでしょう。何かの目標になるかどうかはわかりませんが(笑)、目標になるものを見いだせればそうしてもらえれば、という思いもあります。

 

小山 合宿のときに、バーベキューの準備などをOBがやってくれるので、現役生にとっても「OBさんはありがたいな」という思いが必ずあると思います。

 

―― 中曽根さんは慶應義塾大学に進まれて、そこでもラグビー部に入って活躍されました。私が卒業した新宿高校に比べても、青山高校は、大学に進んでもラグビーを続ける人が多いように感じます。クラブに、そうした土壌があるのでしょうか。

 

中曽根 私たちぐらいまでは、上の世代で大学の体育会でラグビーをやっていたOBはそんなに多くなかったのですが、今は体育会でキャプテンを務めている卒業生もいますし、同好会も含めれば、かなりの数の卒業生がラグビーをやっています。確かに、大学に入っても真剣にラグビーを続ける土壌はできつつあるのかもしれませんね。

先ほど校長先生も言われましたが、私にも「公立、頑張ろうよ」という気持ちはあります。たとえば、私の現役時代も東京都大会で1位、2位を占めるのは私立のラグビーで有名な高校でしたが、いろいろと試合をするなかで「そんなに力が変わらないんじゃないか」という思いがありました。だから、「何とかなるんじゃないか」と大学でもラグビーを続けたのですが、今は部員も50名以上いるし、そのなかから我と思わん人には是非大学でもラグビーを続けてもらいたい。

私は下手クソな選手でしたけど、三つ下の権正は慶應でラグビーを続けて、「日本選抜」に入り国際試合を経験した。また早稲田大学で柳澤がプレーを続け、早明戦などにも出場しました。また最近では徳増さんのご子息も慶應大学で頑張ってくれた。ですから、大学でもラグビーをやってみたいと思う人には、ぜひともチャレンジしてもらいたい。

 

小山 今年は、筑波大学に入った生徒が一人、ラグビー部に入部しましたね。

 

■父母のサポートの重要性

―― 徳増さんは、茗渓学園という私立の中高一貫校でラグビー部を指導されたわけですが、ご自身で指導した私立のラグビー部と、父母として見た青山高校ラグビー部とでは、どういう違いがありましたか。

 

徳増 茗渓のときも普段の練習時間は短かったので、流れている空気や雰囲気はそれほど変わりません。実際にグラウンドに来て感じた大きな違いは、先ほども言いましたが、合宿期間ぐらいですね。

日本ラグビー協会の人間という立場から言わせてもらえば、青山高校は秩父宮ラグビー場から近いこともあって、都立高校ラグビー部のモデルにしたいという期待感を、子どもが卒業してからも持ち続けています(笑)。

海外のラグビー関係者がお見えになったときに、近いので青山高校に連れて行って練習風景などをお見せするのですが、赤土のグラウンドで練習しているのを見て「日本の高校生はこんな環境でラグビーをやっているのか。クレイジーだ!」と言われます(笑)。ただ、彼らが一所懸命ラグビーに打ち込んでいる姿には、強い印象を持たれるようです。

そうした一所懸命ラグビーに打ち込む姿は、茗渓のときとまったく変わりがありません。

もちろん、私立とは、選手の選抜の仕方も違いますし環境も違いますが、青山高校は、そのなかで文武両道を貫いている。ですから、もう少しラグビーをやらせてみたいという思いがありますし、そうすれば、もっと違う結果が出る可能性もあるのではないかという気持ちもあります。それこそ、モデル校に指定したいぐらいです(笑)。

 

小山 確かに練習時間自体に制約があります。以前は定時制がありましたから練習は17時まででしたし、定時制がなくなったあとも、進学指導重点校になったことで17時で練習が終わることに変わりはありません。授業が終わって練習が始まるのは15時30分頃ですから、実質1時間半ぐらいしか練習時間を取れません。そうした環境でやってきたにもかかわらず、ラグビー部は都立高校のなかでトップレベルにずっといる。その辺りは評価できますね。

 

徳増 付け加えれば、茗渓学園のときは部員の父母がラグビーに非常に熱かったんですよ。試合になればみなさんが応援にくる。ですから、私も次男が青山のラグビー部に入ったときに、できるだけ声をかけて父母同士でお友だちになろうとしました。父母同士も交流して、子どもたちの活躍をサポートすることが大切だと思ったからです。ラグビーはあれだけ激しいスポーツですから、親が理解してあげること重要ですからね。

 

中曽根 青山は、父母が皆さんとても熱心ですよね。夏合宿にも多くの父母が見学に来られますし。我々の時代は「親に見に来られるのは嫌だな」という感じがありましたけどね(笑)。今は家族の応援が張り合いになっている。いいことだと思います。

 

―― 確かに私たちの頃は、家で生意気なことを言っている自分が、練習で追い詰められて情けない姿になっているところを見られたくなくて、「絶対に見に来るな!」と親に言っていたようなところがありましたが(笑)、今は選手たちも親に見られることを望んでいるし、親も子どもたちの姿を応援することに熱心ですね。

 

中曽根 学校の近くに、青山高校卒で同期のバスケットボール部のOBが出しているお店があるんですが、いつぞやそこでラグビー部OBたちと呑んでいたら、現役ラグビー部員のお母さん同士の集まりがあって、みなさんで楽しく呑まれていましたよ(笑)。

 

小山 本当に父母のみなさんが熱心ですよね。

私もラグビーが好きなので、ほとんどの試合を見に行きますが、いつも保護者の方がたくさんいます。ラグビー部に限らず、今の保護者の方は本当に熱心ですね。

 

中曽根 確かに家族にバックアップしていただいた方がいいし、最初は親に見られているなかでプレーすることに恥ずかしさを覚えるかもしれませんが、それがやがて応援になって、自分が強くなることに反映されれば素晴らしいことだと思います。

 

■青山高校が目指す「文武両道」とは?

―― 先ほど小山校長から「リーダーシップ」というキーワードが出ましたが、先生は文武両道ということについてどうお考えですか。

 

小山 本校では、1人ひとりの生徒がどちらもできるという意味で「文武両道」と言っています。

学校によっては、進学コースとスポーツコースを分けて、勉強する子は勉強する。スポーツに打ち込む子はスポーツに打ち込むようにして「文武両道」を標榜するところもありますが、青山高校で求められているのは、1人のなかでどちらも両立できる人間になることです。

私は常々「三兎を追え」と言っているのですが、それは、勉強と部活動に加えて、学校行事にも打ち込めということです。

青山高校は、文化祭が盛んでミュージカルや演劇をやります。実際、その三つをやりたいがために青山を志望する生徒がいるのも事実です。ですから、文武両道というより「三兎を追え」と。それを精一杯できるのは高校時代ぐらいですから、この3年間で悔いのないようにやってもらいたい。また、そういう経験が受験にも生きてくると思っています。

 

―― 逆に徳増さんは、監督の立場から「文武両道」ということを、どうとらえていましたか。

 

徳増 冷静にラグビーを分析すると、高校の場合は前後半30分ずつで、試合時間は1時間です。ですから、60分間に最大限に力を発揮できるようにすればいい。そのためには集中力が大切であると気がつきました。集中力のある練習をすれば、集中というキーワードで受験勉強にも集中できるようになるし、文武両道につながると考えたのです。ダラダラと長時間の練習をさせるのではなく、集中力を覚えさせる。それがすごくいいと思いました。

 

中曽根 そうですね。グラウンドを使える時間も含めて制約された条件のなかで、練習も効率的に集中力を高く持ってやってもらいたいですね。

それから、現在は優秀な顧問の先生がお二人いらっしゃって、頑張って指導されていますが、徳増さんのように海外の新しい技術や練習法に詳しい方からお話を伺って、コーチングに新しい要素を取り入れることも必要なのかもしれませんね。

 

徳増 茗渓学園で監督をしていたときに、高校日本代表の合宿に行ったのですが、他の高校からきた選手たちは、普段から4時間、5時間といった練習に慣れているから長時間の練習にも、最初は少し力をセーブして対応できます。ところが、茗渓の選手たちは、1時間半の練習に集中することに慣れているから、最初に力を出して練習の最後の方ではダウンしてしまう(笑)。でも、そうした練習に集中するように習慣づけることは非常に大切だと思います。また、そうした集中力が結果的に文武両道につながると思います。

 

―― 以前、公立の進学校に進むためには内申点が高いことが求められるから、結果として青山のような高校には、体育の成績がいい生徒が集まると聞いたことがあります(笑)。また、高校受験を勝ち抜くだけの集中力を持った子が集まることも、ラグビー部にとってはアドバンテージなのではないか、という話も聞きました。確かに、各都道府県の公立高校でラグビー部のキャプテンをやっていたような選手は、ラグビーに対して自分たちで考えて取り組む習慣を持っているので、大学に進んでもいいプレーをする傾向があるように思いますね。

 

中曽根 今、永田さんが言われたように、一人ひとりが主体性を持ってラグビーにとり組むことはすごく大切なことで、それは青山高校についてもずっと感じています。

 

小山 ラグビーは、監督が試合に送り出したあとは、基本的に自分たちで考えてプレーする部分がありますよね。作戦タイムがあるわけではないし、野球のようにいちいち監督の指示を仰ぐわけでもない。確かに試合では、グラウンドの外から監督が大きな声で指示していますが、グラウンドのなかでは選手たちが自分たちで考えて判断を下している。非常に頭を使うスポーツだと思いますし、優秀な子たちがやっている印象を持ちます。

 

―― 徳増さんが指導された茗渓学園も、自分たちの判断を大切にするチームでしたね。

 

徳増 最後は自分たちで判断してゲームを動かす面白さにたどり着きますね。1チーム15人ともっとも人数の多い競技ですから、チームが一つの方向にまとまるのはそんなに簡単ではありません。だからこそ、枠にはめるのではなく、一人ひとりが考えていかないと、チームワークは完成しません。

今でも、このグラウンドに来ると思わず熱くなって練習を見てしまうんですが(笑)、高校生のラグビーは本当に素晴らしいと思います。最近は女子部員も入ったそうですが、ラグビーは、7人制がオリンピック競技に採用されましたし、2019年にはワールドカップが日本で開催されることもあって、気運がすごく盛り上がっていますからね。彼女が第1号ですか?

 

小山 そうです。

 

―― 塩崎優衣さんですね。先日インタビューをしたのですが、お父さんが慶應大学でラグビーをやっていらして、小学校2年生のときに岡山県のラグビースクールでラグビーを始めたそうです。その後、東京に移ってからも中野区のラグビー部がある中学校に通っていて、学校説明会のときにラグビー部が自分を受け入れてくれるかどうか質問して、大丈夫だと確認して青山高校を受験したそうです。現在は、2020年の東京オリンピックに日本代表として出場することを目指してラグビーに打ち込んでいるということでした。

 

中曽根 そうなんですか! 一番最初に練習で彼女を見たとき、さすがに直接体が触れ合うアタック&ディフェンスは参加していませんでしたが、パス回しではすごくスピードのあるいいパスを放っていたし、菅平の夏合宿では、女子のセレクションマッチでスワーブを切って3人抜くところも見ました。そういうこともできるんだ、と感心した覚えがあります。

 

―― ただ、取材のあとは自習室に残って課題をやると話していました。その意味では、勉強のウェイトが選手のなかに確固としたものとしてあることを感じました。先日練習を見学したときも、理系の生徒は補習で、文系の生徒だけで練習をやっていると伺ってちょっと驚きました。そういう両立がきちんとできているところがすごいと思いましたね。

 

徳増 父母の立場から言えば、外苑祭という文化祭が非常にレベルが高くて驚きました。勉強もラグビーもやって、その上で外苑祭ですから、すごいな、と(笑)。青山高校の3年間は、経験として非常に素晴らしいと思いました。

その頃、私はラグビー部の1年生を教えていたので、部員たちがどの劇に出るのか公平に見るためにいろいろ見て回れましたが、どこも非常にレベルが高かったので驚きました。素晴らしい伝統を持った学校だと思いましたね。

 

中曽根 学業と運動を両立させるだけでも大変なのに、文化祭のようなイベントにも力を注ぐ――大変だろうなと思いながらも、せっかくの機会だから積極的にやって欲しいと思いますね。

 

小山 生徒たちは、時間がないなかで本当によくやっていると思います。

勉強もしっかりやって進学実績も上げないといけないというのが私の命題ですが、ラグビー部はここ数年、1日練習のときは、半日は自習室で勉強するようになっています。午前中が練習のときは午後が勉強というように。普段のときも、自習室は午後8時まで開けていますから、練習が終わってから勉強するようになっています。これは、諫見先生が部として指導されています。

 

中曽根 練習が終わってからも残って勉強しているんですか!

 

小山 部活もいいけど、勉強をおろそかにしてはいけないということです。諫見先生も、ラグビー部が活動を一所懸命できるのは学校の支援があるからで、勉強することは支援に対する感謝の気持ちを表すことでもあると、子どもたちに指導していますし、それはまた、子どもたち自身にも跳ね返ってくることですからね。私としては、顧問の先生からそう言っていただけるので、非常にありがたい。

 

―― そうした青山高校での3年間がその後の人生にどう役立ったのか、OB会長である中曽根さんから一言いただけますか。

 

中曽根 生徒の皆さんは見方によってはおそらく一般の私立の高校等よりも厳しい環境のなかでラグビーをやっていることになると思います。私自身も同様で、それでも他校の有力選手とはそれほど劣らないと思えたから、大学でもラグビーを続けられた――これは青山高校で過ごしたことが大きかったと思います。文武両道ではないですが、一つのことだけではなくて、他のこともやってみようという前向きな意識は、何をやる上でも必要なことだと思いますし、そういう意識がないと成長もしないと思う。

ラグビーだけやっていればいい、受験勉強だけやっていればいい、ではなく、二つ、三つ、四つぐらいのことにチャレンジしてみようという気概を持つことが、成長するには必要でしょうね。また、そうすることで、将来的に仕事の上でいろいろな障害に遭っても、それを克服できるようになると思います。

 

―― 都立高校は、学校行事を含めていろいろなことをする分、あるいは生徒自身もいろいろとよそ見をする分、人生の分母が大きくなるようなところがありますよね。

 

中曽根 我々の時代はラグビーや勉強、文化祭だけに限らず、よけいなアソビもしていましたから、そういう意味では分母がより広がったのかもしれませんね(笑)。いい言葉で言えば、いろいろな経験ができたと言えるでしょう。ただ、やはりラグビーだけは負けたくないという気持ちが強かった。それは共通していると思います。

 

■青山高校ラグビー部が花園に出るために必要なのは?

―― 徳増さんは、監督として茗渓学園を率いて花園の全国大会に出場していますが、青山高校ラグビー部が現在のような在り方のままで、花園に行くには何が必要だと思いますか。

 

徳増 まず……熱くなることですね(笑)。情熱が必要。

一人か二人の選手が「花園に行きたい」と思うのではなく、全部員が一人残らず「花園に行くんだ!」と言う気持ちになれば、自然に部の空気が変わってきます。そういうところからスタートして、強豪校の一角を崩すことが重要だと思います。私も、花園に行ける年は、そういう一つになるパワーを感じましたし、また、そういう集団のパワーを作って行くことが必要だと考えていました。

ラグビーは集団のスポーツですが、要は一人ひとりの個人を集めたスポーツです。当然、それぞれみんな個性がありますから、それを大切にして長所を思い切り出して行けるようにする。人と自分は違うから、自分はここで勝負するというところを見いだせば、面白いチームができるでしょう。今は諫見先生の指導のもと、みんな一所懸命やっていますが、そこにみんなの「何が何でも花園に行くんだ!」という気持ちが加わって120%の力を出せば、たとえ花園に行けなかったとしても残るものは大きい。おそらく青山高校のラグビー部は、そうやって「力を出し切るラグビー」をやってきたと思いますが、私はそれが何よりも大事なことだと思います。

具体的な戦略は、また別な話になりますが(笑)。

 

―― 都立高校が厳しい制約を克服して全国大会に出場するということは、校長先生にとっても望ましいことですか。

 

小山 そうですね。どこかの部が頑張ってぬきんでた結果を残せば、他の部も同じ条件のなかでやっているわけですから、「自分たちにもできるんじゃないか」という気持ちになる。そういう相乗効果が見込めると思います。ですから、どこかのクラブが突き抜けてくれるといいな、という思いはあります。

これは受験勉強でもそうで、青山高校からなかなか東大合格者が出ない時代があったのですが、一人がその壁を破ると、みんなが「ああいうふうに勉強すればいいんだ」と理解する。そうすると、学校全体にそういう空気が出てくる。部活も同じだと思います。同じような練習時間のなかで一つの部が全国大会に出れば、「じゃ、オレたちにもできるじゃないか」という空気になるでしょう。その先頭にラグビー部が立ってくれればいいですね(笑)。

 

徳増 先日亡くなられた衆議院議長の町村信孝さんは、ラグビーワールドカップ2019日本大会成功議員連盟の会長でもありました。町村さんは日比谷高校ラグビー部で全国大会に出た経験をお持ちでした。もちろん、今とは時代が違いますが、都立高校の歴史には、そういうラグビーでも社会でも活躍した方がいる。また、みんなに門戸が開かれている都立高校だからこそ応援したいという気持ちも、社会にはあると思います。

 

中曽根 一人ひとりのタスクが幅広くなって、選手にしてみれば大変かもしれませんが、それができる環境にあるのは事実だと思います。たぶん、スポーツでも、勉強でも、学校生活でも、模範になれるような可能性がある。だからこそ、ぜひ頑張ってもらいたいですね。

 

―― 今日は、どうもありがとうございました。

 

 

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